みなさんは、元気が出ないときは何を食べますか? 病は気から! と、お肉やお魚で気を養う方もいれば、自分の健康を見直すために野菜を意識して食べる方もいると思います。
遥か昔、野菜の用途は体の健康を支えるだけの食べ物としてだけではなく、信仰の道具や薬として使われていた時代がありました。
今回は、『図解 食の歴史』(高平鳴海 著)を参考に、 ピラミッドの建設にも貢献をしたといわれているタマネギが、当時どのように使用されていたのかを紹介します。
目次
ピラミッド建設の報酬になっていたタマネギ
エジプトでは、今回紹介するタマネギ以外にもニラやニンニク、セロリの葉菜類、ラディッシュやレンコンなどの根菜類、他にソラマメなどの豆類と、現代と同じように多くの野菜が栽培されていました。というのも、ナイル川の下流域は三角州地帯となっており、農作に適した地帯だったのです。そのため、豆類は輸出も盛んに行われていました。
古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの著書や、ピラミッドを建設していた時代の史料によると、ピラミッド建設に駆り出された建設者には、報酬としてパンやビール、そしてタマネギやニンニクなどの野菜が与えられていました。ピラミッドの建設は国家事業で、労働者は正当な報酬としてそれらを受け取っていたのです。
その中でもタマネギは、当時のひと達には魔力のある特別な野菜だと認識されており、薬になるとされていただけではなく、時には神聖なものとして、時には不吉なものとして扱われていました。
それでは、タマネギは当時、どのように見られていたのでしょうか。
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魔力がある? エジプト人が信仰したタマネギの力
タマネギは、様々な症状に効く薬としても重宝されていました。例えば、匂いを嗅ぐと視力回復、導眠効果があるとされ、パンと一緒に食べると口内炎に効くとされていました。また、驚きの使用法として、酢、蜂蜜、ワインと混ぜて食べることで歯痛への効能があるとされ、痔の治療には座薬として使われていたというのです。
タマネギは信仰の道具としても扱われており、大量のタマネギがファラオによって神殿に奉納されたことや、王のミイラと一緒に葬られることもありましたが、かたや不吉なものとして神官たちがタマネギを避けることもありました。
タマネギはよく神話に登場をしますが、その解釈によって不吉な野菜とみなされていたのです。
地方神話では、太陽神ホルスがタマネギの茂みに近づこうとして川に落ちて溺れ死んだなど、あまりよい印象の野菜として書かれなかったのが原因でしょう。
とはいえ、薬としての活躍もあり、タマネギは身近な食材でありながら栄養豊富な食べ物として、ピラミッドの建設や当時の人々の健康を支えていました。
そして、エジプトの代表的なサラダと言われている「サラタ・バラディー」など、様々なエジプト料理にも使われるようになり、今でもエジプト人の食生活を支えています。
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ライターからひとこと
時代によって異なる食べ物の見方。あなたの苦手な食べ物も、もしかしたら昔のひとにとってはとても重宝されていた食べ物かもしれません。調べてみたら、案外苦手ではなくなるかも……?