古代ローマの食事と聞いて、皆さんが想像する のはどのような光景でしょうか。
遊びと食事に貪欲だった古代ローマの貴族たちが、食事するために胃におさめたものを吐き、お腹を空にしてまた食べる……。そんな豪奢な 饗宴を思い浮かべる人もいると思います。 しかし、そんな方法で食事を楽しむのは、宴会の時だけで、普段は簡単なもので済ませていました。
今回は、『図解 食の歴史』(高平鳴海 著)を参考に、古代ローマ貴族の宴ではなく、日常の朝食の様子をご紹介します。
目次
饗宴の余韻を残さない、古代ローマ人の朝食
ローマは長い期間存在した国であり、もちろん過ごした年月の分、多くの記録が残されています。今回は、紀元前509年から紀元後の395年、共和政期と帝政期の繁栄をほしいまま にしていた古代ローマでの朝食事情をご紹介します。とはいえ、この期間でもおよそ900年以上という途方もない年月。その中で食習慣や、食事の回数、内容は変化していきました。
ローマ人が起床して最初にする食事は、「イエンタクルム」と呼ばれ、ごく簡単なもので済ませていました。
内容はパンとチーズ、そして果実が少し。朝によく出てくるパンとして、蜂蜜入りのロールパンや、平らなケーキ「プラケンタ」、お供え菓子の「リープム」などがありました。パンは、ミルクかワインに浸して食べることもあったようです。
朝食をたくさん食べるのは、育ちが悪いとさえ言われ、食べる前には同じ物を祭壇に供え、朝のお祈りを捧げていました。
ローマの饗宴からは想像できない簡素な食事の内容と、マナーですね。 また、家で朝食を取らない人は、食堂か屋台で外食をしていました。
そんな古代ローマ人の朝食ですが、庶民にはなんと朝食をタダで手に入れることができる裏技のようなものがありました。
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古代ローマの民は、家族や奴隷を養っていましたが、市民自身もまた、雇い主である貴族に養われていました。その一端として、庶民であれば職場か「パトローヌス」と呼ばれる平民保護貴族の家に朝の挨拶に行くと、「スポルトゥラ」という パンやチーズ、果実が入った小さな籠をもらえました。
スポルトゥラとは貴族からの贈り物であり、与えられる小さな籠入りの食べ物は、すぐに食べてもよいし、町で誰かに売ったり交換してもよく、家族のために取っておくことも可能でした。
これは、市民が貴族に養ってもらうことが当たり前である古代ローマ独特の習慣でした。
この習慣によって、古代ローマ市民は朝の挨拶を貴族にするだけで朝食をゲットできていたのです。
なにかと貴族だけが豪華な生活をして、庶民は貧しい生活をしていると思いがちな時代ですが、庶民に食事を与える貴族もいるなど、意外と良好な関係を築いていたのかもしれません。
本書で紹介している明日使える知識
- かまどの発明
- ハイエナはごちそう
- ワイン製造を独占した修道院
- 中世人の食事回数
- etc...
ライターからひとこと
現代でも十分再現できそうなローマの朝食ですが、パンにチーズに果物と、朝の挨拶に行くだけで貰えるものだと思うとちょっぴり豪華な気がします。明日からローマの朝食にチャレンジしてみたい方は、明日の朝は、パンをミルクかワインに浸して食べてみてください。ローマの朝食が少しだけ味わえますよ。