中世の城の暮らしというと、豪華なパーティーなど華やかな生活を思い浮かべますが、実際の暮らしぶりはもっと地道なものだったようです。
『図解 中世の生活』(池上正太 著)では、中世ヨーロッパの農民、商人、聖職者など、様々な人々の暮らしについて、丁寧に解説しています。今回はその中から、領主とその家族たちが城でどんな暮らしを送っていたかご紹介します。
目次
城の暮らし①領主の毎日は多忙だった
中世の城には、領主とその家族、騎士、司祭、使用人など様々な人が暮らしていました。その中から、まずは領主の暮らしについてご紹介しましょう。領主とその家族は、朝起きるとまず沐浴や洗髪をして身だしなみを整えた。それから朝のミサに参加する。この際、簡単な朝食を取ることもある。無論、それらに関わる人々は、領主たちよりも早く起きて仕事にかからねばならない。昼食は豪華で量も多く、夕食は非常に遅い時間にあっさりとしたものを取った。 『図解 中世の生活』p.212領主の役割は、責任者として城や領地、配下の者たちの管理を行うことです。
家令や代官と打ち合わせを行い、日々の運営方針を指示します。家令は騎士階級や聖職者の出身の者が就く職業で、領土管理を担当する者と、城内の管理を担当する者というように仕事別に雇われていました。この家令が出す指示を受け、城内の使用人や賦役に従事する農民たちが実際の作業を行います。
領内で起きた犯罪の裁判も領主の重要な仕事のひとつです。裁判や決済に必要な公文書の作成は司祭が行っていました。また、配下の騎士たちに指示して領土の防衛や軍事活動を行うことも領主の大切な仕事となっていました。
こうした仕事の他に空き時間がある時や、客人が来ている時などは、宴会を行ったり狩りや武芸試合などの娯楽をして過ごしていました。特に狩猟は戦争の訓練にもなり、食糧を手に入れることもできるため、野外の娯楽として人気が高かったといいます。屋内で行われる娯楽には、チェスやすごろく、サイコロ遊びといったゲームとそれに伴う賭け事などがありました。
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城の暮らし②奥方も城の運営の担い手
続いて、奥方をはじめとする領主の家族の暮らしについてご紹介しましょう。奥方は召使いや乳母に指示を出し、掃除や洗濯、子育てなどの家政全般を取り仕切っていました。領内の政治にも通じており、夫である領主が無能であったり、戦争で留守の時には、領主の仕事を代わりに行うこともありました。
この他に、客人をもてなしたり、刺繍や機織りを行うことも奥方の仕事とされています。
余暇には吟遊詩人の奏でる音楽を楽しんだり、時には自ら詩歌などの芸術活動を行うなどしていました。芸術家のパトロンとなり援助を行うこともあったといいます。また、ラテン語の勉強をしたり、侍女たちとおしゃべりを楽しんだりして余暇を過ごすこともありました。
領主の子どもたちは礼拝堂の司祭から勉学を学びます。その後は自由時間で、好きな遊びをして過ごすことができました。また、男の子の場合は幼いうちから訓練に出され、礼儀作法や戦士としての技術などを習得します。女の子である姫君たちは、家事や刺繍、ラテン語の読み書き、歌唱や作詞などを習いました。
このように、領主と奥方はそれぞれの仕事を分担し、配下の者たちと協力し合って城の運営を行っていました。中世の城の暮らしというと、きらびやかで浮世離れした優雅なイメージがありますが、実際にはひとつの組織としてそれぞれが果たすべき役割に日々懸命に従事していたといえそうです。
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