マンドラゴラ、アルラウネ、マンドレイク……。どれかは一度でも聞いたことがあるのではないでしょうか。これらは全て同じ生き物のことを指します。
マンドラゴラの根は人の形をしており、引き抜くと甲高い悲鳴をあげ、それを聞いた人は発狂してしまったり、最悪死んでしまうこともあります。
実は、マンドラゴラには、死の危険を冒してでも採取したい効能があるのです。
今回は『幻想世界の住人たち』(健部伸明/怪兵隊 著)を参考にマンドラゴラに秘められた力をご紹介します。
目次
愛の野草マンドラゴラに秘められた力
マンドラゴラは、英語でマンドレイク、ドイツ語でアルラウネとも呼ばれており、ペルシア語で「愛の野草」を意味します。また、アルラウネは「秘密に通じている」という意味のドイツ語の古形から来ています。マンドラゴラの姿は釣り鐘の形をした紫色の花と、オレンジ色の実を結ぶ植物で、根の部分は裸の人間の形をしており、手足は勿論、生殖器まで備わっていました。
性別があり、白いマンドラゴラは男、黒いマンドラゴラは女とされていました。
マンドラゴラの効能は、部位によって様々な効能があります。
実には有毒ですが、麻薬・催眠剤の効果あり、根には媚薬の効果があるといわれ、万病に効く霊薬として使われていました。
媚薬として用いる場合は、男のマンドラゴラが女性に、女のマンドラゴラが男性に効果があるとされていました。
また、薬としてだけではなく、宝探しの際や、敵の攻撃から身を守るための護符としても使われることもありました。
もちろん、これだけの効果があるのですから、採取には危険が伴います。
有毒のため、うっかり触れただけでも死に至る危険性があり、人型の根は大地から引き抜かれる時にとてつもない叫び声をあげ、その声を聞いた者はたちどころに死んでしまいます。
死を免れたとしても、ヒステリーを起こしたり、発狂したりしてしまいます。
それでは、危険と隣り合わせのマンドラゴラは、どのようにして採取されていたのでしょうか。
実は難しいマンドラゴラの採取の仕方
マンドラゴラの採取の方法は、いくつかあります。ひとつは、ひとりが犠牲になってマンドラゴラを引き抜くというものです。引き抜かれたマンドラゴラは叫ぶため、引き抜いた人間は死んでしまいますが、叫び終わって無害になったマンドラゴラを別の人間が採取するという最も簡単で最も残酷な方法がありました。
ふたつめは、引き抜く人間がマンドラゴラのまわりに剣で三重の輪を描いて、西の方角を眺める、というものです。これが一番損害の少ない方法といわれています。
最も一般的とされていたのは、犬を使う採取方法です。
マンドラゴラの周囲の土を根元が見えるところまで掘り進み、根に縄を結び、その一端を犬の首に結びつけて引き抜かせるという方法。
犬は死んでしまいますが、貴重なマンドラゴラを手に入れることができました。
採取の際、周囲にいる者は掌で耳を塞いだり、耳栓をしたりしてマンドラゴラの叫び声を聞こえないようにするなど、様々な工夫と犠牲を重ねてマンドラゴラを採取していました。
入手するには、常に危険と死が隣り合わせのマンドラゴラですが、それでも手に入れたい魅力的な効果・効能があったのです。
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ライターからひとこと
有毒ですが、万能薬にもなるマンドラゴラ、ちょっと気になりますが、飲むのにはなかなか勇気がいりそうですね。本書では、様々な幻想世界の生き物たちが紹介されています。本を開けば、ファンタジー世界に飛び込むことが出来ますよ。是非、たくさんの生き物たちと触れ合ってくださいね。