この第2回では、冒険の舞台となる世界についてと、その中にある魔法の驚異についてお贈りする。
そこには、小さな村のささいな困りごとから、国家やいち種族の存亡、次元界の支配権や、世界の存続をかけた神話英雄譚までを繰り広げることができる、それぞれ特徴を備えた世界の数々が設けられている。
目次
舞台となる世界
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の舞台となる複数の世界は、いずれも魔法と怪物の横行する地、勇敢な戦士と驚くべき冒険の待つ地である。
多くは中世ヨーロッパ風ファンタジーの世界を土台としており、その上で個々の世界は特有のクリーチャー、土地、魔法によって独特のものとなっている。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の諸世界は、多元宇宙と呼ばれる巨大な宇宙の中に存在し、奇妙不思議な方法で相互につながりあい、また他の次元界――たとえば火の元素界、たとえば無限の階層なす奈落界アビス――ともつながっている。
多元宇宙には無数かつ無限に多様な世界が存在する。うち、複数のものが、D&Dの公式セッティング(世界設定)として刊行されてきた。フォーゴトン・レルム。ドラゴンランス。グレイホーク。ダーク・サン。ミスタラ。そしてエベロン。
これらの世界はみな、多元宇宙という大きな織物を織りなす糸となっている。そしてこれらの名高い世界のほかに、さらに無数の世界がある――何世代にも及ぶD&Dプレイヤーが、自分たちのゲームのために作り上げた世界が。
この豊穣(ほうじょう)な多元宇宙のなかに、君もまた、君自身の世界を作り上げることになるかもしれない。
これらの世界には共通の特徴もある。けれど、個々の世界はそれぞれ固有の歴史と文化、特徴ある怪物と種族、目をみはるような壮大な地形、太古の地下迷宮、たくらみをめぐらす悪党どもを擁している。
一部の種族は世界が違えば特徴も違う。たとえばダーク・サン世界のハーフリングは密林に住む人食い種族であり、エルフは砂漠の遊牧民である。
一部の世界には他のセッティングにみられない種族が存在する。たとえばエベロン世界のウォーフォージドは、人の手で生み出され生命をふきこまれて最終戦争の戦場に送りこまれた兵士種族である。
一部の世界は一つの大きな物語を軸として動く。たとえばドラゴンランス世界の竜槍戦争である。こんなふうに色々な違いはあるが、これらの世界はすべてD&Dの世界であり、どの世界でキャラクターを作成してゲームをするのにも本書のルールは使用できる。
君のDMはこうした既存の世界のひとつをキャンペーンの舞台にするかもしれない。また、自作の世界を舞台にするかもしれない。
D&Dの諸世界は実に多様だから、君は今回のキャンペーンではハウスルールを使うのか(そして使うとしたらそれがゲームにどんな影響をもたらすか9を、DMと話し合っておくとよい。たとえ公式世界を用いる場合も、キャンペーンと世界設定に関する決定権は最終的にはDMにある。
魔法の驚異
D&Dのアドベンチャーが、魔法に関わる事態が何も起きないまま終ってしまうことはめったにない。害をなし益をもたらす魔法は、冒険者の生涯にしばしば顔を出す。魔法は第3部の主題である。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界では、魔法を行なう者はごく少数であり、その驚くべき“わざ”のために世間一般の人々とは隔絶している。世の人が“たしかに魔法はある”という証拠を目にすることは多いが、その多くはごく小さな、ちょっとしたものである。
ふしぎな怪物。明らかな証を伴って聞き届けられる祈り。シールド・ガーディアン(盾なる守護者)と呼ばれる人造クリーチャーを護衛として大路を歩くウィザード。
まあ、ざっとそんなところ。
一方、冒険者にとっては、魔法はまさに生存の鍵である。クレリックやパラディンの癒しの魔法がなければ、傷ついた冒険者はたやすく音を上げる。勇気を与えるバードやクレリックの魔法の助けがなければ、戦士たちは強力な敵に圧倒されてしまう。ウィザードやドルイドの多様かつ強力な魔力がなければ、あらゆる脅威は10倍の力をもって迫ってくる。
また、魔法は悪党の大好きな武器でもある。多くのアドベンチャーは、魔法の力でよこしまな目的をとげようと血まなこになった、呪文使いの悪だくみを軸にして動く。カルト教団の指導者が水底にまどろむ神を目覚めさせようとする。ハグ(妖婆)が若者をさらって魔法の力で彼らの若さを吸い上げてしまおうとする。狂えるウィザードが生き物の姿を真似た自動人形の大軍勢を作り上げようとする。1頭の竜が謎めいた儀式を執り行ない、破壊の神に成り上ろうとする。
……これらはいずれも、冒険者たちの直面するであろう魔法の脅威のほんのとば口にすぎない。そして冒険者たちはこうした脅威に立ち向うのだ、自らもまた、呪文や魔法のアイテムといった魔法を携えて!
『ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック 日本語版』P.5~6 「舞台となる世界」、P.8 「魔法の驚異」より。掲載章の言及はすべてPHB日本語版を指す。
※記事中の日付は記事公開時のものです。