第1回、第2回にわたり、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』がどのような遊びであるか、その舞台がどのような世界かについて紹介した。第3回では、実際のテーブルの上でのプレイの手順と、ダイスと基本的な判定方法を紹介する。
特にダイス・ロールにおける「有利と不利」は第5版の新たなルールであり、遊びやすさの向上をもたらしている。
このゲームはどうやって遊ぶか
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というゲームは、だいたい次のようにして進む。
1.DMが状況を説明する。
DMはプレイヤーたちに、彼らの操る冒険者(=PC)たちがどこにいて、周りに何があるかを説明し、一わかる基本的な選択肢にはどんなものがあるかを示す(部屋から外に通じる扉がいくつあるかとか、テーブルの上に何がのっているかとか、酒場に誰々がいるかとかである)。
2.プレイヤーが、自分は何がしたいかを述べる。
具体的には、たとえば1人のプレイヤーがパーティ全体を代表して「みんなで東の扉へ向います」などと言うこともある。また個々の冒険者が別々のことをする場合もある。1人は宝箱に鍵や罠はかかっていないかを確かめ、1人は壁に彫りこまれた神秘的な印を調べ、また1人は怪物が現れはしないかと見張る……というぐあい。プレイヤーたちは必ずしも順ぐりに“ぼくは/わたしは何をするか”を宣言せねばならないわけではない。しかし何にせよDMはプレイヤー全員の言うことに耳をかたむけ、それらの行動をどう解決すればいいかを判断する。
こうした作業の解決は、たいへん簡単な場合もある。たとえば冒険者が部屋を歩いて横切り扉を開けようとしたなら、DMは単に「扉は開きました。そこであなたが見たものは……」と言って扉の先にある景色を説明すればよい場合もある。けれど、そうでない場合もある。扉に鍵がかかっていたり、床に恐るべき罠が隠れていたり、そのほかいろいろな状況のせいで、冒険者がこの作業を簡単に解決できない場合もある。そんな場合、具体的に何が起きたかはDMが判断する。この判断に際しては、ダイスをロールして行動の帰結や成否を決定することもよくある。
3.DMは冒険者の行動の結果として何が起きたかを語る。
この結果が語られることで、話に改めて次の判断が必要になり、ゲームの流れが『1.DMが状況を説明する』に立ち返る、ということもよくある。
冒険者たちが廃墟を用心深く探索している時にも、腹黒い大公と話をしている時にも、恐るべき竜との命がけの戦いのまっただ中でも、このパターンは成立する。戦闘など、特定の状況下では、各人の行動は比較的カッチリと構造が決っており、プレイヤーたち(とDM)は決った順番通りに行動を選択し解決してゆく。けれどほとんどの場合には、ゲームの進行はもっとあいまいで柔軟であり、冒険のその場その場の状況に合った形で進む。
冒険者の行動は、プレイヤーとDMの想像力の中で起り、情景描写はDMが言葉で語るだけ、ということも多い。DMは絵や音楽や(あらかじめ録音ずみの)音響効果を用いてふんいきを盛り上げることもある。DMやプレイヤーが、ゲームの中で冒険者やモンスターやその他のキャラクターを演じ分けるために声色や口調を変えることも多い。DMは時にはマップを広げ、その場にいるクリーチャーをコマやミニチュアであらわして、“誰がどこにいるか”をプレイヤーにわかりやすくすることもある。
ゲームに使うダイス(さいころ)
このゲームでは、いろいろな多面体のダイス(それぞれの面に数字が書いてある)を使う。これらのダイスはゲームショップや書店で入手できる。
ルール中、各種のダイスは「d」の後に何面体なのかを表す数字をつけて書かれる。d4、d6、d8、d10(このダイスの0の目はゼロではなく10を意味する)、d12、d20がある。たとえばd6は6面体のダイスのことだ。
ただしパーセンテージ・ダイスまたはd100だけは少し違う。これはつまり、1~100の数字を出すために、2個の別々の10面体ダイス(いずれも0~9の数字が書いてある)をロールすることである。一方のダイスが10の位になり、もう一方が1の位になる(どちらをどちらにするかはロールの前に宣言すること)。たとえばこれで7と1が出たなら結果は71である。2つとも0が出たなら結果は100である。世の中には10の倍数(00、10、20……)が書いてある10面体ダイスもあって、これを使えばどちらが10の位でどちらが1の位かがわかりやすくなる。この場合、70と1が出たなら71、00と0が出たなら100である。
ダイスをロールする際、どんな種類のダイスを何個ロールして、どれだけの修正値を足し引きするかは、ルールに書いてある。たとえば“3d8+5”というのは、8面体ダイスを3個ロールして出た目を足し合わせ、その合計の値に5を足す、ということである。
同じような“d”表記に、“1d3”や“1d2”というものがある。これに相当するダイスは入手が難しい。そこで、1d3のロールを行なうには、1d6をロールして出た目を2で割る(端数切り上げ)。1d2のロールを行なうには、任意のダイスをロールして、奇数なら1、偶数なら2とする(あるいは、出た目がそのダイスの面数の半分よりも大きいならば2とする、という方法もある)。
d20
冒険者のふるった剣は、竜を傷つけるか、それとも鉄のようにかたうろこい鱗にはね返されるだろうか。オーガ(人食い鬼)は冒険者のとんでもないはったりにダマされてくれるだろうか。キャラクターは濁流を泳ぎ渡ることができるだろうか。キャラクターは炸裂する火の玉を避けることができるだろうか、炎からまともにダメージを受けてしまうだろうか。行動の帰結が定かでないとき、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」では20面体のダイス=d20をロールして成功か失敗かを判定する。
ゲーム内のキャラクターやモンスターはみな、何がどのくらい得意かを、6つの能力値であらわされている。能力値には【筋力】、【敏捷力】、【耐久力】、【知力】、【判断力】、【魅力】がある。これらの能力値は、ほとんどの冒険者の場合、3~18の枠の中におさまる(モンスターは1~30の値を取り得る)。これらの能力値と、能力値から算出される能力修正値が、プレイヤーがキャラクターやモンスターのために行なうd20ロールのほとんどすべての基本となる。 ほとんどのd20ロールは能力値判定、攻撃ロール、セーヴィング・スローの3種のいずれかに属する。この3つがD&Dのルールの基本になる。そして3つとも、以下の簡単なルールに従う。
1.ダイスをロールして修正値を足す。
d20を1個ロールし、適用される修正値をすべて足す。これは6つの能力値のどれか1つに由来する修正値であることが多い。キャラクターが特定の事柄に長けていることを示す習熟ボーナスが修正値に含まれることもある。各能力値のくわしい説明と、どうやって能力値から修正値が決定されるかについては、第1章を参照のこと。
2.状況によるボーナスとペナルティを適用する。
クラス特徴、呪文、特定の状況、その他の効果によって、判定にボーナスやペナルティが付くことがある。
3.合計の値を目標値と比べる。
合計の値(訳注:これをロール結果と言うこともある)が目標値“以上”なら、その能力値判定/攻撃ロール/セーヴィング・スローは成功である。目標値“未満”なら失敗である。通常はDMが目標値を決定し、プレイヤーの能力値判定/攻撃ロール/セーヴィング・スローが成功したか失敗したかを宣言する。
能力値判定やセーヴィング・スローの目標値は難易度と呼ばれる。攻撃ロールの目標値はアーマー・クラス(AC)と呼ばれる。
この簡単なルールが、D&Dというゲームの中での、ほとんどの行為の成否を決める。ゲームにおけるd20の使用法に関するさらに詳細なルールは第7章を参照。
有利と不利
能力値判定、攻撃ロール、セーヴィング・スローは、有利や不利と呼ばれる特別な状況の影響を受けることがある。有利はd20ロールをとりまく有利な環境を反映したものであり、不利はその逆である。有利を得ている時や不利を受けている時は、ロールを行なう際にもう1個のd20をロールする。そして有利を得ている時は高いほうの目を、不利を受けている時は低いほうの目を使う。たとえば不利を受けていて出た目が17と5なら、5のほうを使う。逆に有利を得ていて同じ目が出たなら、17のほうを使う。
※有利と不利に関するより詳しいルールは第7章を参照。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック 日本語版』P.6 「この背ゲームはどうやって遊ぶか」、P.6~7 「ゲームに使うダイス(さいころ)」「d20」「有利と不利」より。掲載章の言及はすべてPHB日本語版を指す。