アーサー王伝説といえば数々の映画やゲームなどの題材として有名ですが、どんな内容か皆様ご存知でしょうか?
『英雄列伝』(鏡たか子 著)では、アーサー王をはじめ、神話などに登場する数多くの英雄たちについて解説しています。今回は本書を参考に、アーサー王伝説をご存じない方に向けダイジェストで内容をご紹介します。
目次
アーサー王の誕生と名剣エクスキャリバー
アーサー王は、イングランド全土の王ウーゼル・ペンドラゴンとコーンウォールの領主ティンタジェル公の妃イグレーヌの間に生まれました。 しかし、アーサーは、生後間もなく予言者マーリンの勧めでエクトル卿という騎士に預けられ、彼のもとで息子として育てられます。 『英雄列伝』p.80-81少年となったアーサーは、ある年の正月、ロンドンで行われる馬上試合に出かけますが、エクトル卿の息子ケイ卿が剣を忘れたため、剣を取りに宿に帰ります。しかし宿は留守で中に入れませんでした。そこで代わりに教会の敷地内の鉄床に突き刺さっていた剣を引き抜き、ケイ卿に渡します。
この剣はただの剣ではありませんでした。クリスマスの日に突然教会に現れたもので、「この剣を引き抜く者こそ、イングランドの正当なる王である」と記されていましたが、アーサーが引き抜くまで誰にも抜くことができなかったのです。 事態を知った養父エクトル卿はアーサーに、アーサーが本当は自分の子ではなく、高貴な血筋であることを明かします。王としての証を立てたアーサーを諸侯も認め、彼はイングランドの国王となりました。
ところでよく混同されますが、この剣は有名な名剣エクスキャリバーではありません。エクスキャリバーとの出会いは、アーサーが王になってからのことでした。 冒険の旅に出たアーサーは、教会で引き抜いた奇跡の剣を折ってしまいます。新たな剣が必要となった彼を、予言者マーリンが湖のほとりへと導きました。すると不思議なことに、水面から剣を持った姫の手が突き出ているではありませんか。
姫から手渡されたエクスキャリバーは名剣ですが、実は鞘の方がより重要でした。この鞘には魔力があり、鞘を持っている人間は一滴の血を流すこともないとされていたのです。 しかしこの鞘は後に、妖妃モルガン・ル・フェイによって盗まれてしまいます。
アーサー王をめぐる人々~マーリン・円卓の騎士~
アーサー王伝説に関連して、マーリンや円卓の騎士といった言葉を聞いたことがある 方も多いのではないかと思います。 そこで本書を参考に、彼らにまつわるエピソードを簡単にご紹介しましょう。①予言者マーリン
アーサー王を名剣エクスキャリバーへと導いたマーリンは、インキューバス(夢魔)の父と人間の母との間に生まれ、未来を予言する能力や数々の魔術を行う力を持っていました。その力を使い、彼はアーサー王と王妃グィネヴィアとの結婚を企てるなど度々アーサー王を補佐します。
しかし、恋した相手である湖の淑女ヴィヴィアン(妖精)に魔術を盗みだされ、眠っている隙に魔術の力で霞の塔に閉じ込められてしまいました。アーサー王は騎士たちにマーリンを探させますが、これ以降、マーリンが人前に姿をあらわすことはなかったのです。
②円卓の騎士団
円卓の騎士団とはアーサー王に仕えた騎士たちのことです。結婚の祝いにアーサー王の妃グィネヴィアの父ロデグランス王が贈った百人の騎士に、国中から探し出した立派な騎士を加えて結成されました。名前の由来は同じく結婚祝いとして贈られた円卓で、卓を囲む者は上下の区別なく平等な立場とされました。
アーサー王伝説では、この円卓の騎士たちがさまざまな冒険を繰り広げます。その中から有名な騎士を2人ご紹介しましょう。
・ラーンスロット卿
ラーンスロット卿は湖の乙女(妖精)に育てられたため、「湖の騎士」とも呼ばれます。アーサー王の忠臣として信頼厚く、武芸にも優れていました。多くの女性が彼に恋をし、中でもエレインという女性は魔法の力を使って彼と一夜を共にし、ガラハドという子どもを産みました。詳しくは後述しますが、後にラーンスロット はアーサー王と対立することになります。
・ガウェイン卿
ガウェイン卿はアーサー王の甥にあたり、ラーンスロットと並び数々の武勲をうち立てました。彼は朝から正午までは力が増すという特殊な体質の持ち主で、一説によるとその力は3倍にまでなったといいます。後に円卓の騎士が崩壊すると、彼はラーンスロットと一騎打ちをし、重傷を負ってしまいます。
アーサー王の最期と名剣エクスキャリバーの行方
最後に、アーサー王の死 にまつわるエピソードをご紹介しましょう。円卓の騎士のひとりラーンスロット卿は、アーサー王の妃グィネヴィアと道ならぬ恋に落ちます。しかしふたりの関係は暴かれてしまい、そのときのいざこざでラーンスロット卿は円卓の騎士を何人か斃し 、フランスへと逃走してしまいました。
アーサー王はラーンスロット卿を追討すべく海を渡りますが、その留守中にアーサー王の息子モルドレッド卿が王位を奪おうとたくらみます。それを知ったアーサー王は急いでイングランドに引き返しましたが、戦いの末にモルドレッド卿の刃を受け倒れてしまいました。名剣エクスキャリバーの鞘は盗まれてしまっていたため、「鞘を持っている人間は一滴の血を流すこともない」というあの魔力は及ばなかったのです。
死の淵にあるアーサー王は、臣下のベディヴィア卿に、湖にエクスキャリバーを投げ込むよう命じます。その時の様子について、本書では次のように記しています。
ベディヴィア卿が剣を湖に投げると、湖の中からすーっと手が現れ、剣をつかむと再び湖の底へと消えていきました。エクスキャリバーは湖に戻っていったのです。 そのとき、数人の貴婦人たちを乗せた小舟が湖を渡ってきました。アーサー王はこの小舟で、妖精の島アヴァロンへと去っていきます。 『英雄列伝』p.92こうしてアーサー王の物語は幕を閉じますが、イングランドには、国に大きな災いがふりかかった時、アーサー王がアヴァロンから戻り国を救うという伝承が残りました。
◎関連記事
騎士道と恋心の板ばさみ! “円卓の騎士”ラーンスロットの生涯
本書で紹介している明日使える知識
- ラーンスロット
- ダビデ
- ソロモン
- フィン・マックール
- etc...