1話 2話 3話 4話 5話 6話 7話 8話 9話 10話 11話 12話 13話 14話
時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。
宇宙人襲来
作者:野村カイリ
いまから数えて100年ほど前のことになる。 20XX年、地球人類は宇宙人の侵略を受けた。 この事変を今日では、エイリアンとアタックを合成して“エイタック”と呼んでいる。このことは、皆さんご承知の通りだ。
言わずもがなだが、XX年とは物語中で大まかに年代を表す時に用いる記号だ。たいていは、現時点から見て近未来(近い将来)の物語であることを、曖昧かつ手っ取り早く宣言することに用いる。警告めいたノンフィクション感を与えつつも、荒唐無稽なフィクションであることも読者に了解してもらう便利な呪文である。
これから読者の皆さんにお話しするのは、わたしが見聞きした事実の記録である。決してフィクションではない。とは言え、SF作家としての独特の理解と多少の脚色、叙述のテクニックがあることは承知していただきたい。なにぶんにも「わたしはSF作家」なのだ。それ以外に書き方を知らない。“エイタック”という、世の中のどの年表にも年号とともに載っている歴史的事件を、あえてXX年としたのも、SF作家ならではのことだとご承知いただこう。
さて、記録によれば侵略とは次のようなものであった。
1隻の巨大宇宙船が現れ、空中を移動しながら次々と大都市を破壊していった。
ベタな展開であった。アピールできるポイントがあるとすれば巨大宇宙船ということくらいであろうか。かつての古典SF映画に登場する宇宙船(当時は空飛ぶ円盤とかUFOと呼ばれていた)はせいぜいスタジアム程度のサイズだった。やがてCG技術が登場するとSFアニメや映画に登場する宇宙船は大都市の数ブロックをすっぽりと覆ってしまうほどの大きさになっていった。巨大であることが、エイタック当時の流行であり、作品製作上のセオリーだった。では、実際に現れた宇宙船の大きさはどうであったか。
映画以上に巨大であった。