古代ギリシアにおいて、装飾品はその大半が女性向けであり、男性向けの装飾品は権力の象徴として利用されていました。古代ローマでも、その状況は大きく変わりません。
古代ローマでは、支配下に置いた都市国家の優れた文明をそのまま吸収していたことが理由です。
それでも時代が下るにつれて、技術は磨かれていきます。シンプルであった装飾品は、徐々に複雑になったり、素材が変化したりしていきました。今回は、古代ギリシアと古代ローマにおいて、どのように装飾品のデザインや意味合いが変わっていったのか、少し詳しくご紹介したいと思います。
目次
古代ギリシア・ローマの装飾品はこう変化していた!
古代ギリシアにおいて、装飾品が発展するようになったのはアレクサンダー大王の遠征が行われた紀元前4世紀、ヘレニズム期以降のことでした。この古代ギリシアにおける装飾品の特徴として、以下の3つがあります。
・金、銀がメインの素材
・繊細、かつ金属を多く使わない工夫をした細工が多い
・男性は権力の象徴として用いたが、基本的に女性用
これは、優れた金属加工技術を有する先住民族(ミノア、ミケーネ、エトルリアなど)の文化と、アレクサンダー大王による遠征、およびギリシアの繁栄によってもたらされた古代オリエントの文化が混じり合った結果、開花したものでした。
この時期の装飾品には、金や銀を細かい粒状に加工する粒金細工や、細い針金のように加工する線条細工が用いられました。
複雑で精緻な文様を描くことにより、使う金属の量が少なくなるよう工夫したのです。
紀元前1世紀以降、帝政ローマの時代になると、その特徴は少しずつ変化していきます。この頃の古代ローマの装飾品には、
・金、銀よりも宝石や、安価な色ガラスを素材として使用していることが多い
・金属の加工技術はギリシアの技術を継承している
・帝政時代に入ると、男女ともにお洒落のために装飾品を身につけるようになった
という特徴があります。
では、具体的にはどう変わっていったのか、装飾品の種類ごとにちょっと詳しく見てみましょう。
古代ギリシア、古代ローマの人々の髪を彩った装飾品とは?
古代ギリシアの人々は、髪型に相当の注意を払っていました。そんな彼らの使用していた頭飾りは、以下のようなものが挙げられます。
・月桂樹のティアラ
・薔薇のティアラ
・装飾板のディアデム
・ヘラクレスの結び目のディアデム
髪型を重視している彼らの使う頭飾りには、かぶり物は少なく、髪型をサポートするスタイルのものが多く存在しています。
これらは、金や銀、青銅、宝石類、七宝細工を主な素材とし、動植物や、ヘラクレスの結び目と呼ばれる帯状の文様などが主なモチーフとなっています。
その傾向は古代ローマにも続き、英雄カエサルは禿げを隠すため月桂樹をモチーフとしたティアラをつけていたという有名な話があるほどです。
また、女性向けの髪飾りにはベールも挙げられます。
古代ギリシア時代には、髪の保護用に使われていたベールですが、古代ローマ時代になると、お洒落のための装飾品として用いられるようになりました。
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古代ギリシア、古代ローマの耳飾りは誰のもの?
古代ギリシアでは、耳飾りは女性の装飾品でした。金や鉄、翡翠などの加工しやすい宝石類を主な素材として、粒金細工や線条細工を施した豪華な耳飾りが作られています。
そのモチーフは動植物や鳥類、魚類、神話動物など多岐にわたり、時代が下るにつれ、耳飾りのサイズも大型になっていきました。
それに対し、古代ローマでは、男性も耳飾りを身につけるようになりました。素材は古代ギリシアのものに加えて、サファイアやエメラルド、ガーネットなどが使われています。固定の方法はフックによるものが多く、中には輪の片側の先端に小さな円を作り、もう一方の先端を差し込んで固定する方式のものも作られました。モチーフは古代ギリシアと同様ですが、単体のモチーフが多く、とりわけ雄牛が人気でした。
技巧の古代ギリシア、シンプルの古代ローマ
初期の古代ギリシアは、非常に優れた金属加工の技術によって、打ち出しや線条細工、線刻を用いて凝った装飾の首飾りを作っています。その後、時代が進むにつれ、ダイヤモンド、サファイア、ガーネット、オパール、アメジスト、エメラルドといった宝石類も使われるようになっていきました。
そして古代ローマにおいては、首飾りに使う素材は、宝石が主役となります。
その作りはシンプルで重く頑丈なものが多く、ビーズを連ねる形のネックレスもあり、宝石を樽形や円筒形に加工したものもありました。
また、古代ローマでは真珠の人気が高く、真珠を糸で連ねたネックレスは高値で取り引きされました。
本書で紹介している明日使える知識
- 頭飾りの分類と各部名称
- 装飾品の素材1 貴石
- 古代メソポタミアの装飾品の歴史
- ケルトの主な装飾品
- 中世前期から盛期の頭飾り
- etc...
ライターからひとこと
今回は『図解 装飾品』(池上良太 著)を参考に、古代ギリシア、および古代ローマの装飾品について紹介しました。この2つは似ているような印象を持ちますが、このように比較していくと、そこには大きな違いがあるようです。こういった文化の違いを理解をすることは、創作などに役立つかもしれません。みなさんも、興味深いテーマを発見したら、とことん調べてみるのも面白いですよ!