ギリシア神話の英雄ペルセウスをご存知ですか? 怪物メデューサ(メドゥサ、メドゥーサ)を倒した逸話をご存じという方も多いかもしれません。
『英雄列伝』(鏡たか子 著)では、ペルセウスやダビデ、アーサー王など、ヨーロッパの英雄にまつわる神話や伝承を幅広く取り上げ、解説しています。今回はその中から、ペルセウスにまつわる神話をご紹介します。
目次
ペルセウスの誕生~生まれる前から試練続き
ペルセウスは、主神ゼウスとアルゴス王家の娘ダナエとの間に生まれました。しかし彼は望まれずして誕生した子供でした。それは彼が祖父のアルゴス王アクリシオスを殺す宿命を背負っていたからです。 『英雄列伝』p.199アルゴス王アクリシオスは、「将来、お前は自分の孫に殺されるだろう」という予言を受けていました。彼にはダナエという美しい娘がいました。予言を恐れたアクリシオスは、ダナエを青銅の塔に閉じ込め、決して誰にも会わせないようにします。しかし、大神ゼウスが天空から彼女の姿をみとめ、恋をしてしまいました。
ゼウスは黄金の雨に身を変えて屋根をつたい、ダナエの膝に降りそそぎます。こうしてゼウスの子を身ごもったダナエは、ペルセウスを生んだのです。 『英雄列伝』p.182~183アクリシオスは予言に怯え、ダナエとペルセウスを木箱に入れて海に流してしまいます。ところがゼウスの加護があったおかげで 、木箱はセリポス島の漁夫ディクテュスに拾われました。こうしてペルセウスはディクテュスの元で暮らし、立派な若者に成長しました。
ペルセウスが神やニンフから授かった武器とは
ペルセウスの養父となったディクテュスには、ポリュデクテスという狡猾な兄がいました。ポリュデクテスは美しいダナエに結婚を迫りますが、あえなく断られてしまいます。
彼にとっては、ダナエの息子であるペルセウスは邪魔な存在です。そこである日、ポリュデクテスはペルセウスを宴席に招待し、怪物メデューサを退治しその首を持ってくるようにと言いつけます。こうしてペルセウスはメデューサ退治の旅に出かけることとなりました。 旅立ちにあたり、ペルセウスはギリシア神話の神アテナとヘルメスから4つの武器を与えられます。
その内容を本書の中からご紹介しましょう。
アテナは三つのものをペルセウスに与えました。一つめが、黄金の楯(青銅という説もあります)です。この楯は鏡のようにぴかぴかしていて、メドゥサに出会ったときには、この楯に映して見れば石にならずに戦えるのです。 『英雄列伝』p.184
二つめは、かぶるとまわりに闇が立ちこめ、その人間の姿を隠してしまうという兜(または帽子)でした。 『英雄列伝』p.185
三つめは、黄金の翼のついた靴で、この靴をはくと鷲よりも速く飛ぶことができました。 『英雄列伝』p.185
ヘルメスは百眼巨人のアルゴスを倒した刀をペルセウスに与えました。 『英雄列伝』p.185ペルセウスはアテナとヘルメスからもらった刀と兜、盾を持ち、黄金の翼のついた靴で空を飛び冒険へと旅立ちました。途中でメデューサの姉妹のグライアイという3人の老婆と対決し、ニンフの住む“黄昏の娘たちの園”へと続く道のりを聞き出します 。
そこは澄んだ水が流れ、花が咲き乱れる常春の国でした。
ニンフたちはたいへんに喜び、彼に金糸で織ったキビシスという魔法の袋を贈りました。この袋こそメドゥサ退治になくてはならないものだったのです。蛇の髪の毛をもつメドゥサの首は、強力な毒をもっていました。この魔法の袋だけが、その毒に耐えることができたのです。 『英雄列伝』p.187こうして準備を整えたペルセウスは、いよいよメデューサの棲むオケアノスの流れへと向かいます。
メデューサ退治~眠れるゴルゴンの3姉妹
ペルセウスは悪臭たちこめる大きな沼にたどり着きました。沼の表面からは、緑色をした不気味な炎がめらめらと燃えあがっています。この沼から続くひとすじの流れが、オケアノスの流れでした。ペルセウスは、河に沿って進んでいきました。しばらくすると、真鍮の鱗と翼をもった三人の巨大な生き物、ゴルゴンが眠っているのが見えてきました。 『英雄列伝』p.187ゴルゴンはステンノ、エウリュアレ、メデューサという3人姉妹でした。メデューサは髪の毛が全て蛇でできている怪物で、その姿を見た者を石に変えてしまうという恐ろしい力を持っていました。ペルセウスは黄金の楯を掲げてメデューサの姿を見ないようにしつつ、その首を新月刀で切り落としました。
ころがった首をキビシスの袋にしまっていると、物音に気づいた二人のゴルゴンが襲ってきました。ここでペルセウスはすかさず兜をかぶります。姿を隠したペルセウスは無事に逃げおおせたのでした。 『英雄列伝』p.189こうしてペルセウスのメデューサ退治は無事に完了しましたが、帰り道に彼はもうひとつの武勲をうちたてます。それがアンドロメダの救出です。
アンドロメダ姫の救出と預言の結末
フェニキア海岸の付近で、ペルセウスは岩にしばりつけられた娘を発見します。彼女はアンドロメダという名前で、エチオピアの国王ケフェウスと妃のカシオペアとの娘でした。 アンドロメダは自身が岩にしばりつけられてしまった顛末を語ります。母のカシオペアが自分の美しさを自慢したことがきっかけで、一家は海神ポセイドンの怒りをかってしまい、娘のアンドロメダがくじらの怪物ティアマトのいけにえにされてしまったというのです。事情を聞いたペルセウスは、手にしていたメドゥサの首で怪物を石に変え、アンドロメダを救ったのでした。その後、ペルセウスはアンドロメダと結ばれることになります。 『英雄列伝』p.190こうして結婚した2人はセリポスに帰還し、幸せな日々を過ごしました。
ところでみなさんは、ペルセウス誕生の前に、彼の祖父アクリシオスに与えられた予言を覚えていますか? 「将来、お前は自分の孫に殺されるだろう」というものです。
この予言について、こんな後日談が残されています。
アクリシオスを探していたペルセウスは、テッサリアの地で開かれた競技に参加し、円盤を投げます。これが偶然アクリシオスに当たり、彼は死んでしまいます。こうして予言は現実となりました。 『英雄列伝』p.191結局、予言は当たってしまったのですね。 ペルセウスは偶然とはいえ祖父を殺してしまったことを悔やみ、祖父を手厚く葬りました。 その後、彼はティリンスの王となり、高齢になるまでその地を統治したと言われています。
本書で紹介している明日使える知識
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