パンタポルタ特派員Aは、西洋剣術スクール「キャッスル・ティンタジェル」様にご招待い ただき、2017年6月25日に開催されたアーマードバトル大会「2017年 第2回STEEL! リーグ マッチ公式戦」を観戦する機会を得た。当レポートで熱い戦いが繰り広げられたその模様をお届けしよう。
アーマードバトルとは?
アーマードバトルという競技をご存知だろうか? 詳しくは日本アーマードバトル・リーグ (JABL Japan Armored Battle League)の公式サイトをご覧いただくとして、一言で言えば、14 ~15世紀に実在した鎧を装着し、スポーツウェポンと呼ばれる剣や長柄の武具を手に戦う、格闘スポーツである。日本アーマードバトル・リーグ 公式サイト
http://www.armoredbattle.com/
アーマードバトルには、ルールが異なる何種類かの競技がある。STEEL! リーグマッチで行なわれるのは、金属製のスポーツウェポンを用いる「スティールアーマーバトル」というルールである。
スティールアーマーバトルは14世紀~15世紀の騎士のトレーニングの為に開催されていたトーナメントを現代に再現した競技だ。金属製とはいえ、刃は落とされ先が丸められており、また刺突や金的、脊柱といった急所への攻撃、関 節技、突き技は禁止されている。試合前には鎧のチェック、スポーツウェポン、選手のチェックを入念に行なうなど、スポーツとして安全に配慮がされている。そのためスティールアーマードバトルはフレンドリー競技ともよばれている。
国内では、JABLによって毎年チームリーグ戦が行われており、海外への日本代表チームの 派遣や、海外チームを招いての国際試合も行われている。
現在、JABLにはドラコーネズ、サングリエ、黒鋼衆の3チームが所属している。ドラコーネ ズ、サングリエは西洋の甲冑、武具を用いたチームだが、黒鋼衆は日本式のいでたちをした 選手が中心となっていて、チームごとに装備や戦い方に特色がある。
今回開催された「2017年 第2回STEEL! リーグマッチ公式戦」はこの3チームによる年間リ ーグ戦の本年度2回目の大会である。今年は9月に最終戦が行われ、そこで2017年の年間チ ャンピオンチームが決定するのだ。
今大会は、キャッスル・ティンタジェルの道場内で開催された。決っして広いとは言えな い会場だが、各チームに水着姿の女性ディーバが付いて応援に華を添えていた。彼女たちが身につけている水着はチェインメイルをイメージしてデザインされている。我々含め取材陣の姿も多く、立ち見含め満員の客入り。何度も観戦に訪れている観客が多いのか、贔屓の選手に対しての声援も多く、チームへのチャントも飛び交う、熱い会場となっていた。数年に渡って開催されているリーグマッチが浸透しているようだ。競技として根付くことを目指したJABLの努力が垣間見える。
白熱の試合内容
試合形式は1対1で戦う個人戦(デュエル)と、各チーム数人ずつで争う団体戦(メーレー)に分かれる。手にするスポーツウェポンは、剣と盾を持つソード&シールド、両手で扱う剣のロングソード、 長柄のポールアームの3種。対戦相手同士は同じスポーツウェポンで争うので、公式戦においてはソ ード&シールド対ロングソードという試合は行われない。個人戦は体重によりクラス分けされており、勝敗は相手に有効攻撃を与えた回数をカウン トするポイント制で争われる。全身を甲冑で防御しているので、打撃によるKOはほぼ発生 しないようだ。
甲冑の上からとはいえ、金属製の武具によって全力で攻撃を加えるので、打突時はかなり大きな音がする。攻撃がヒットした時、また選手同士がぶつかった時に起きる金属同士の衝突音、選手がフェンスに衝突した時目の前のフェンスがきしむ迫力は生観戦ならではのものだ。動画サイトにアーマードバトルの模様が多数アップされているが、興味をもった方はぜひ試合会場に足を運んで体感してほしい。工事現場や金属加工の工場でしか聞かないような音を出す打撃が人間に加えられることに衝撃を受けるだろう。
甲冑破損のための試合中断もたびたび発生し、試合終了時には兜や鎧が大きく凹んでいることもある。いったい中の選手は無事なんだろうか、と心配になるところだが、選手負傷によるストップは発生しなかった。甲冑による防御はしっかり選手の安全を守っているようだ。
試合は、フェンスに囲まれたおよそ6メートル四方のスペースで行われていた。一般的なプ ロレスのリングが6メートル四方なので、同じような空間をイメージしてもらうと良いだろう。本来、多人数対多人数のメーレーはさらに広いテニスコートほどの広さの競技場で争われるそうだ。今回は同一会場で複数試合が行われる関係上、団体戦(メーレー)もここで行われたという事情だそうだ。
個人戦におけるロングソード戦、ポールアーム戦での、時に相手との間合いを測ったり、打突機会を探り合ったりする場面は、剣道や打撃系格闘技の試合を思わせるところもあった。ひるがえって我々になじみが薄いのは、盾を持って戦うソード&シールド戦だろう。特に盾を使うテクニックは今まで実際に見る機会もなく、非常に新鮮だった。盾で相手の動きを封じ、打撃を加える戦術は防御が困難で大きなポイントを獲得するのに有効なようだ。
また、フェンスに相手を押し付けて動きを封じる、コーナーに押し込んで膝蹴りを放つ、前 蹴りで相手との間合いを取るなど、UFCをはじめとする総合格闘技で使われる動きも多く 見られた。単なる剣術というだけでなく、総合戦場格闘術といった体で、非常に多様なテクニックが有効な競技だと感じた。
団体戦(メーレー)では打撃によるポイントではなく、地面に倒された選手がその瞬間に試合参加の権利を失い、試合終了時に残っていた選手の数でチームの勝敗が決する。1対複数での戦いも発生するので、体格的に不利な選手も、数の優位で対したり、背後など死角からの攻撃も駆使したりして敵をテイクダウンできる。地面に倒れた時点で負けとなるのは、いかにも戦場を想定した格闘技だ。実際に人馬乱れる合戦場で地面に倒れてしまったらその時点で戦死はまぬがれがたいということなのだろう。
大会はサングリエが他2チームを抑えて勝利。聞くところによると、サングリエは近年常勝 の強豪チームなのだとか。しかし、黒鋼衆にもフランスナショナルチームに所属していた選手が新加入するなど、各チームの活性化は進んでいるそうだ。9月のリーグ戦最終大会での波乱を期待したい。
名古屋、仙台にキャッスル・ティンタジェルの支部が誕生!
このところ、JABL、キャッスル・ティンタジェルともにメディアで紹介される機会が多く、 やってみたい、体験してみたいという問い合わせも増えているのだとか。アーマードバトル入門者にとって大きなハードルとなるのは、練習場所や仲間の確保だという。東京近郊在住 であればアクセスの良い目白にあるキャッスル・ティンタジェルに通えるのだが、地方に住 む人にとっては、体験するのもなかなか難しいのが現実だ。ところが、大会の途中でビッグニュースが発表された。キャッスル・ティンタジェルの支部 が8月に名古屋、9月に仙台と2ヶ所誕生することが決定した。詳細の質問や入門希望者の受付はキャッスル・ティンタジェル問い合わせ窓口で対応してくれるという。早期入門者には 特典も用意されているそうだ。地方支部ができることは、いよいよ全国的にアーマードバトルが普及する布石となるかもしれない。
入門後に自前の甲冑を揃えるための費用について、キャッスル・ティンタジェルに質問して みた。スティールアーマーバトル以外のルールでは金属ではなく、ラタンという木製のスポーツウェポンを使用している。 ラタンの打撃に耐えられる練習用の甲冑であれば、20万円ほどで揃うそうだ。20万円とい えば、ちょっと良いロードバイクを買う値段と思えば良いだろう。新しいスポーツを始めるための投資として、考えられる範囲ではないだろうか。
非常に激しく、体力を必要とするスポーツだが、歴史への興味やあこがれを満たしつつ、体も鍛えられる。歴史上の戦いに興味のある人やコミックやゲームで甲冑姿の騎士に憧れをいだいている人はキャッスル・ティンタジェルの扉を叩いてみてはどうだろう。
2017年7月16日(日)キャッスル・ティンタジェルにて特別ビギナーレッスン開講
まずは、アーマードバトルに触れて自分に合うかどうかを体験してみたい、という方に朗報だ。7月16日(日)キャッスル・ティンタジェルにて初心者を対象とした特別レッスンが開かれるという。詳細は下記キャッスル・ティンタジェル公式サイトにて確認してほしい。http://www.castletintagel.com/index.php/news/post_typenews-5/