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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。
生きていたエイリアン
作者:野村カイリ
巨大宇宙船の調査と研究ははかどらなかった。見知らぬ原理、理解できない技術ばかりで、船内の機械や装置がなにに使われるのかもまったく分からなかった。
巨大宇宙船の調査と研究ははかどらなかった。見知らぬ原理、理解できない技術ばかりで、船内の機械や装置がなにに使われるのかもまったく分からなかった。
成果がなにひとつ出ないまま3年が過ぎた。
調査・研究が進むようになったのは、ただ一人生存していたエイリアンが名乗り出て以降のことになる。死んだと思っていた者が実は生きていたというのはドンデン返しの筆頭パターンだ。
このエイリアンは、墜落当初に宇宙船に入ったUFO愛好会によって密かに保護されていたのだった。
曽祖父たちが発見した時、このエイリアンはインフルエンザの高熱にうなされ、肺炎を起こしていた。曽祖父は防護服を脱ぐと、エイリアンをその中に入れた。宇宙船内には人類にとって未知のウイルスが存在するかも知れない。そんな危険極まりない場所で防護服を脱ぐのは大馬鹿か英雄かのどちらかだ。曽祖父はのちに告白している。
「そういえばそうだったね」
単に感動と興奮で忘れていただけだった。
曽祖父はエイリアンを宇宙船の外に連れ出すと、UFO愛好会の本部、すなわち築35年の曽祖父の自宅に運び込んだ。大学病院の勤務医をしている会員が、人工呼吸器など必要な機械を無人となっていた病院から持ち込んだ。