漫画やゲームなどでオーディンの名前を目にしたことのある人も多いと思います。戦争と死の神であり、呪術の神、そして知識と詩芸の神と言われたオーディンは、北欧神話においてどのような役目を果たしていたのでしょうか。
『図解 北欧神話』(池上良太 著)では、北欧神話の中でどのようにオーディンが活躍していたのかについて紹介されています。今回はその中から、オーディンの性格、役割、女性遍歴などについてお話します。
目次
オーディンという神の性格、容姿とは
北欧の主オーディン。多くの力と名を持つこの神は、複雑で酷薄な 性格の持ち主であった。 『図解 北欧神話』p.42巨人の母をもつオーディンは、北欧神話の主神であり、戦争と死の神とされています。また、知識が豊富で、魔術、詩芸に長けた神としても知られています。
〈オーディンの主な役割〉
戦争と死の神:戦争を起こし、死者を司ることができる
呪術の神:ルーン文字の秘密を司る
知識と詩芸の神:詩人に才能を与える力を持っている
オーディンは、長い髭を蓄え、片目がない姿で描かれます。天界では黄金の鎧を纏っているとされますが、地上での姿はつばの広がった帽子を深くかぶり、青いマント を着て、魔法の槍グングニルを持った老人として描かれることがほとんどです。二匹の狼ゲリ、フレキと二匹の鴉フギン、ムニンを連れて描かれることもあります。
オーディンが片目なのは、魔術の知識を得るために目と引き換えにミーミルの泉の水を飲んだからで、失った目を隠すために帽子を目深に被っているとされています。何事にも貪欲であり、策略や裏切りも平気で行ったため、オーディンと関わる部下たちは、危機に陥ったり、命を落としたりすることもありました。
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戦争の神としてのオーディンの働きとその力
戦の神としての側面を持つオーディン。王侯たちはその移ろいやすい加護を求め彼に祈った。 『図解 北欧神話』p.42本来はテュールという神が戦神とされ、その領分を司っていましたが、オーディンも戦争の神として活躍します。
その大きな要因は、オーディンが策略や戦術に長けており、呪術を使って戦局を操ることが可能だったからです。例えばわざと王侯たちを不仲にし、戦争を起こさせるよう仕向けたこともあります。
しかも戦争の勝利者を誰にするかはオーディンの意思ひとつで決められました。加護をすると決めた王侯にはその力を惜しみなく授けたため、多くの王侯たちはオーディンに取り入ることで勝利を手にしました。
しかし、オーディンの加護は気ままで移ろいやすく、勝利を手に入れた王侯たちがすべて無事にハッピーエンドを迎えるというわけにはいかなかったようです。親族、またオーディン自身の裏切りによって命を落とすものや、失脚するものもありました。『ヘイムスクリングラ』の「ハーコン善王のサガ」の中では、このような王侯たちの苦悩や戦いが繰り広げられています。
オーディンにまつわる女性たちとその関係性
オーディンは様々な女性たちの間を渡り歩き、多くの浮名を流している。 『図解 北欧神話』p.42ギリシャ神話の主神であるゼウスも多くの女性遍歴がありましたが、北欧神話の主神であるオーディンもその数は負けていません。彼の子供だとされる神の多くが、正妻との間にできたわけではないという共通点もあります。そしてオーディンにとって自分が関係した女性関係についてはまさに戦歴であり、『詩のエッダ』の「ハールバルズの歌」ではそれを息子に自慢げに語る場面が書かれているほどです。
ですが、オーディンと関係を持った女性の多くは不幸な目にあっています。オーディンの持つ魔術で無理やり犯されたもの、また、息子の復讐を手伝うために使われた女性もいます。巨人の娘グンロズに至っては、「詩人の蜂蜜酒」というアイテムを手に入れるためだけに関係を持たされています。
『詩のエッダ』「高きものの言葉より」の中では「美女をうまく利用した。頭のいいものにできないことはない」「恋心が、賢いものを愚かものにさせる」などオーディンの女性観について書かれています。 オーディンにとって女性は恋愛対象ではなく、目的のために利用するか、一時の遊び相手でしかなかったようです。
しかし、たった一度、巨人ビリングの娘に抱いた感情だけは特別なものでした。ところが娘はオーディンをうまく煙に巻き逃げたため、オーディンは彼女を手に入れることができませんでした。また正妻であるフリッグに対しても頭が上がらないことが時々あったようです。フリッグは独自の考えを持っており、夫の言うことに黙ってついていくだけの女性では決してありませんでした。そして時には夫を陥れることも厭わないような女性でもありました。
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