初詣や日常の参拝など、わたしたち日本人の多くは、最低でも年に一回は巫女さんに会っているのではないでしょうか。
巫女さんといえば、あの白い小袖に赤い袴姿ですよね。
しかしお仕事の内容も含め、意外と詳細を知らない方も多いのでは。
今回は『図解 巫女』(朱鷺田祐介 著)の中から、装束(衣装)を中心に、巫女さんのヴィジュアルについてご説明します。
目次
そもそも巫女って何をするの? 衣装の決まりは?
巫女は、いわゆる神社にいる「神社巫女」と、イタコや沖縄のユタなどに見られる「口寄せ巫女」にわかれます。「口寄せ巫女」は「憑依巫女」とも言われ、お告げや儀式を行い、シャーマニックで、ときに性的な要素を持っています。
今回ご紹介するのは「神社巫女」です。
こちらは「口寄せ巫女」とは反対に、神聖で処女性などを重視する清らかなイメージです。
わたしたちが普段神社でお世話になっているのは、こちらの巫女さんたちですね。
さらにその「神社巫女」のなかでも、現代では主に2つのタイプにわかれています。
第 1 が祭祀(神霊を祭る儀式)で神職のお手伝いをする、祭祀補助者の女性である。『図解 巫女』p.14こちらの巫女は、神社の雑務を担当しています。
対してもうひとつの巫女は、以下のような役目です。
第 2が女性の神職で、彼女達は神官(男性の神職)と同じく特定の養成所に通い、神社庁(都道府県に置かれる神社本庁の下部組織)の認可した資格を保有した宗教資格者である。戦前、神職は男性に限られていたが、 戦中、女性も神職になれるようになった。女性神職は現場の要請上しばしば巫女を兼ね、巫女の装束で行動することも多い。『図解 巫女』p.14わたしたちが良く見るのは、白い小袖に赤い袴の、第1タイプの巫女さんですよね。
しかしこの第1タイプの巫女には、意外な事実があります。
第2タイプの巫女には正式な衣装規定がありますが、なんと第1タイプの巫女には、服装の規定がないのです。
神職を補助する巫女の基本的な装束は?
服装規定のない第1タイプの巫女の装束は、その神社ごとに規定ができます。とはいえ、やはりほとんどの巫女さんたちが共通の装束を身に纏っているようです。
巫女は、白衣に袴を着け、足には白足袋、草履を履く。袴の色は神職の身分によって定められており、巫女はこれ以外の色、一般的に緋色か朱色を用いる。赤いものは特に緋袴(ひのはかま)という。『図解 巫女』p.16定番はやはりこの姿ですね。
白の小袖は、現代の着物の原型といえます。
この白の小袖と袴の上下は、巫女に限らず男女ともに使用する作業着で、「常位(とうえ)」と呼ばれます。
神職も下に着ており、祭祀以外の時間はこの格好で過ごします。
また、使ってはいけない色もあります。
①「禁色(きんじき)」
皇室のみ使える色で、天皇陛下の「黄櫓染(こうろぜん)」と皇太子殿下の「黄丹(おうに)」の2色。
②「忌色(いみじき)」
葬儀などに使う色で、鈍色または鼠色。
ただし神道の葬儀である「神葬祭」のときには、「忌色」の装束を使います。
(関連記事:「女子なら一度は憧れる?「巫女さん装束」の雅やかな装飾品」)
巫女の装束 小袖はどうなっている?
先ほどもすこし触れましたが、小袖とは、現在一般的に「きもの」と呼ばれるものと同じと考えてよいでしょう。これは平安時代が発祥といわれ、庶民が着ていた小袖を公家が取り入れるなどの進化ののちに、今の「きもの」に繋がっています。
また、狭い意味では、綿の入った絹製のものを小袖、木綿で綿が入ったものを布子、さらし木綿一枚で綿の入らないものを浴衣と区別する場合もある。『図解 巫女』p.18ちなみに、成人式などで女性がよく着る着物の長い袖が「振袖」です。 巫女が使う「留袖」は、一般的に見る短い袖の着物です。
以下に、男女の小袖の違いを簡単にまとめます。
【女性の小袖】
長さ:足首の下まで
袖:動きやすさのため、袖と脇の両側に縫われずに開いている箇所があり、「八つ口」と呼ぶ。
【女性の小袖】
長さ:足首の上まで 袖:八つ口はなく縫われており、「人形」と呼ぶ。
また、襟は「掛襟(かけえり)」となっていて、赤い色をすこしだけ見せます。
巫女の装束 袴はどうなっている?
袴も小袖と同じく、平安時代に登場しました。主に巫女装束に使われるのは「捻襠袴(ねじまちはかま)」と呼ばれ、これは平安時代の女官が用いたものです。
この捻襠袴には、襠(まち)があり、左右の足が独立して動かせるようになっています。
履くときには、腰の高い位置で、腰紐を後ろで結んで固定します。
しかし現在では、「行灯袴(あんどんばかま)」という、スカート状の袴も多く使われるようです。
明治になって教育者の下田歌子が女学生のために行灯袴を発明した。これは襠がないスカート状の袴で、当時の着物に比べて 非常に動きやすく着脱も簡単なため、女性向けの礼装に用いる女袴として普及した。『図解 巫女』p.20行灯袴は、動きやすさと礼装が両立することから、今では巫女の袴の主流となっているようです。
袴には、朱色から緑、濃色(こきいろ=紫)などさまざまな色があります。
もちろん人気なのは、やはり緋色です。
着付けは? 巫女装束はどうやって着るの?
巫女装束は、実際には小袖だけではなく、和服の下着を着けます。
ここでは簡単に着装の手順をご紹介します。
①肌着、下着(腰巻・肌襦袢)の上から白衣をまとい、白帯で留める。『図解 巫女』p.23白衣とは小袖のことです。
「腰巻」はその名のとおり、腰に巻く下着です。着物の裾が足にからむのを防止します。
別名「裾よけ」、「蹴出し(けだし)」とも呼びます。
②袴はまず足を通した後、最初に前を合わせて、そこから伸びている帯を腰に回して結ぶ。 ③後ろを合わせ、さらに帯を両側から腰に回し、前でリボン結びに結ぶ。『図解 巫女』p.23晴れの日で着たことのある方や、剣道や弓道の経験がある方はご存じかと思いますが、 袴は前後にわかれています。これに足を入れたあと、前を腹にあて、腰に巻きます。
そのあとに後ろを引き上げて、腰から前へとまわし、リボン結びにします。
これに和装の靴下「白足袋(たび)」を履き、「草履」、もしくは「浅沓(あさぐつ)」を履いて、基本の常位が完成します。
巫女のドレスアップ! もうひとつの装束「千早」
千早(ちはや)」とは、巫女が神事の奉仕や、神楽(かぐら)を舞うときなどに使う、儀礼用の衣装です。
神楽は、お祭りの際などに巫女が神に奉納する舞のことなどを指します。
千早は、古来より日本の神事に用いられた女性用の衣装で、もともとは白無地の絹でした。
現在では一般的に、無地の白絹に薄く紋様を描いたものが多いのですが、華美なものもあるようです。
たとえば、金襴(きんらん)といって、繻子(しゅす)・綾などの地に、金糸を織り込んで紋様を表した、豪華な織物を使います。
繻子は光沢のある布で、現代ではサテンとも呼ばれます。
模様は鶴や亀、松などおめでたいものです。
さらにこれに、お雛様が着けている「天冠(てんがん)」という花かんざしや、額にあてる「前天冠」などを身に付けます。
神楽は、お祭りの際などに巫女が神に奉納する舞のことなどを指します。
千早は、古来より日本の神事に用いられた女性用の衣装で、もともとは白無地の絹でした。
現在では一般的に、無地の白絹に薄く紋様を描いたものが多いのですが、華美なものもあるようです。
たとえば、金襴(きんらん)といって、繻子(しゅす)・綾などの地に、金糸を織り込んで紋様を表した、豪華な織物を使います。
繻子は光沢のある布で、現代ではサテンとも呼ばれます。
模様は鶴や亀、松などおめでたいものです。
さらにこれに、お雛様が着けている「天冠(てんがん)」という花かんざしや、額にあてる「前天冠」などを身に付けます。
貫頭衣が原型であるため、千早は、肩袖の根元は縫われているが、袖の両側や 胴体の横は縫われず、開いたままになっている。このため、小袖の上からゆったりと重ねて着ることが出来るが、しっかりと留めるものではない。前には飾り紐があり、これでゆるやかに留める。『図解 巫女』p.23このように、千早はゆったりとした造りになっていて、これにきらびやかな天冠をつけた姿はとっても優雅です。
いつもの清楚な姿から、ぐっと華やかになった巫女さんは、どこか幻想的で素敵ですね。
以上、巫女装束についてのご紹介でした。
ぜひ次に神社にお参りする際には、巫女さんのファッションチェックもしてみてくださいね。
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本書で紹介している明日使える知識
- 巫女の種類
- 神の妻
- 巫女の装束
- 巫女装束の着装
- 千早
- etc...
ライターからひとこと
巫女さんは、身近でありながら、非現実的な存在のように感じます。お祭りなどに赴いて、実際に巫女さんに会いたくなりますね。なお本書では、小袖や袴の図解に加えて、巫女装束の着装(着付け方)について詳しい説明と図解がありますので、ご参考ください。また装飾品について、さらに一歩踏み込んだ内容の記事もあわせてご覧ください。